10 統合失調症の1年間

※お越しいただきありがとうございます。
このブログは、息子が統合失調症を発症してからの記録です。第1章から、順にお読みいただくと、経過がわかりやすいかと思います。


大地が最初のアルバイトを辞めたのは2月の中頃だったか…。

人の健康は、季節や天候の変化が影響するということを経験したことがある。
例えば、スギ花粉の時期にはアトピー性皮膚炎が悪化したり、台風が発生すると喘息のある人はすぐに気付いたり。季節の変わり目には、じんましんの出る子どもが多くなったり。
同じように、精神疾患も、悪化しやすい季節というものがあるように思う。
もちろん、個人差はあるだろうが、大地の場合は、冬の終わりから春先、2月~3月ごろが悪化しやすい時期のような気がする。

その頃、大地は再び妄想が出ていた。

それまでも、「ストレスかな?」と思うような出来事があったりすると、過去の妄想を話す事はあったのだが、誇大妄想と言えるほどの大きな話ではなく、ありがちな話だったし、話へのこだわりもさほど強くなかった。

ところが、その年の2月。アルバイトそのもののストレスなのか、ガラの悪い客とのやりとりのせいなのか、辞めてしまったことによるストレスなのか、季節によるものなのか、原因の特定はできないのだが、誇大妄想が出ていた。

発症して丸3年になろうとしていた。私は、それまでも、どうすれば大地が妄想を妄想だと気づくのか…。はっきりと、「これは妄想」「これは本当」という境界がないようで、本人は妄想を話しているという意識がないことがほとんどだった。

些細な事でも、妄想の話を聞きたくない。

そんな事ばかり考えていた。

けれどある日、仕事帰りの車の中で、職場の、激しい怒りの感情をぶつけてくる、ある一人の患者さんのことを考えていたときに、どんな思いであのような表現になってしまうのだろうかと、その人の気持ちを深く深く深く考えていた時に、急に悲しみが込み上げてきたことがあった。「そうだよね。辛いよね。」私は、なんだか泣きたい気持ちになった。そして、患者さんの心に寄り添うってこういうことなのかもしれないと感じた。

同じではないか?私は大地の心に寄り添っていたのか?

大地の心に寄り添うってどんなことなのか?

「妄想の話は引きずってほしくない!妄想の話を忘れてほしい。」

これは私の気持ち。

でも、大地にとってはホントの話で、私にしか話さないのは、どこかで、ホントの話なのかどうなのか、不安になっているのではないか。…だとしたら、ホントの話だと言われて安心したいのではないか。

その話が、実際にあったことではないとなると、大地は悲しくなるだろうな…。そういった妄想で、自分の自信につなげているのかもしれないし。

どうすればいいのか?何かつかめそうな気がする。。。

そう気づいた日の夜、いつもの犬の散歩に行くと、大地は妄想の話を始めた。

静まり返った静かな住宅街を二人で歩く。

二人になると大地は話し始める。

「母さんは、どうせ信じないんだろうけど、これは本当だと思う!オレ、あいつに会いに行くから!そしたら本当の話だって証明できるから!!そしたら薬も飲まなくてもいいし。俺は病気じゃないってことになる!!」

いくつかの話はぼんやりとした記憶になっていて、妄想かもしれないと思っているようだが、友だちのヤンキーとケンカをしたとか、何人かとケンカをして勝ったとか、そういった話は、妄想ではないと言う。

大地のこの妄想は、妄想追走というものらしい。うっすらと妄想の記憶を残したまま寛解することもあるという統合失調症。もしかしたら、大地のこの妄想は、一生続くのかもしれないと、ふと思った。

だったら…

私は、患者さんに寄り添うように、大地の気持ちにも深く深く心に寄り添うように考えた。深く冷たい海の底へ沈んでいくような感覚だったが、発症したばかりの時の、自分の心のありようではなく、大地の心の奥深くを冷静に、落ち着いて深く深くさぐるように…。

そこには、一番理解してほしい母親が、自分の話を信じてくれないという寂しさ、悲しみ、怒りがあった。

私は思った。

実際にヤンキーと喧嘩ばかりの毎日を送っていたとして、だからなんだというのだ。警察官の知り合いがいたとして、だからなんだというのだ。

過去に、喧嘩ばかりの毎日だったとしても、警察官と一緒に暴力団事務所へ行ったとしても、今の大地は、ここにこうして、昔と変わらない私の息子として、隣を歩いているではないか。

妄想がある大地も、大地なのだ。

大きな命の流れの中で、妄想があるかないかなんて、どうでもいいのだ。ちっぽけな事だった。

落ち着いて、しっかりと言葉を選んで、伝えてみた。

「大地の話したことが、本当の話かどうか、母さんにはわからない。見ていたわけではないから。でも、それが大切な思い出なら、ずっと大事にしなさい。」

大地は「自分の話が本当かどうか、昔の友だちに聞いてみる。」と言うので、

「もちろんそうしたいなら、すればいいよ。でも、誰がなんと言おうと、どんな結果になっても、それは、大地にとって大切な思い出でしょ。だから、大切にしなさい。」

大地はちょっとびっくりしたようだった。

いつもなら、なんで信じてくれないんだよ!とイライラし始めるけど、その日は、その後ずっと黙っていた。

そして大地は、妄想の話が本当かどうかを、昔の友だちに聞きに行ったりはしなかったし、

翌日から散歩に出かけても、妄想の話をすることはなくなった。

発症から丸2年経った2016年の春、認知機能リハビリテーション(NEAR)を初め、それまでの寝てばかりの生活から少しづつ、ほんの少しづつ、変化してきた。研究結果は決して良くなったとは言えなかったけれど、「意欲」という、数値で評価できないものが、良くなった気がした。

秋には警察官採用試験を受け、不合格。けれど、大地が自分で書類を用意し、発症後初めて一人で、初めての場所へ電車を乗り継いで行った。その後、電車に乗ることに対してハードルが低くなったらしく、中学の時の友だちに誘われて、電車を乗り継いでコミケに行って徹夜して並んだり、高校の時の友だちと渋谷に行ったりできるようになった。

初めてのアルバイトは、2か月半しか続かなかった。けれど辞めたいと届けを出してから、1か月続けたことは、この病気でなくてもそうそうできることではない。

そして大地は再びアルバイトを始めた。3月から始めたネットカフェのアルバイトは、2017年8月6日現在まで、まだ続いている。


統合失調症のLINEグループがあります。
家族のLINEグループ、当事者のLINEグループ、雑談のグループなど、他にも色々あります。
schizo.blog-ga-schizo.net/2017/07/26/post-34/
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コメント

  1. 向日葵 より:

    森の民さんの考え方に感銘を受けました。
    私も病院に勤務してますが、こちらの仕事を進めたいがために、寄り添っているところがあります。統合失調症の弟の妄想や考え方が間違っているということを、どう伝えればわかってもらえるかということに一生懸命になっていた気がします。何度も読み返し、何かつかめればいいなと思います!更新楽しみにしています。