02 初診

市内の駅の近くにあるHクリニック。複合ビルのエレベーターを出ると、目の前のドアに「精神科 Hクリニック」とだけ書かれていた。「心療内科」じゃないんだ…と思った。

名称の違いだけで、病気の重さが違う気がした。心療内科に通院の既往程度で済ませたい気持ちがあった。それは、将来息子が、就職や結婚という状況になった時に、精神科にかかった事を知られたら、ダメになってしまうんではないかという心配からだった。

けれど、実際目の前にいる息子はどうだろう。軽いうつ症状とか思春期の悩みがあるとか、そんな状態ではない。将来の事より、「今」息子に必要な最善の事をしなければいけない。

それは、精神科受診。そして、おそらく入院になる。

精神科という名称を堂々と掲げているこのクリニックは、その科に対する誇りと世間に対するバリアフリー的な考えを主張しているようにも感じた。良い医者に診てもらいたい。ずっとかかることになるから。初めが肝心。そう思ったけれど、ググってみても、精神科の医者の評判ってわからない。小児科だったら友だちに「あそこどう?」って聞けたけど、誰にも聞けなかった。今の私は「ご縁」を信じるしかない。

息子は、自宅から車で15分のここに来るまでの間、「なんで病院行かなきゃ行けないんだよ!」を3回ほど繰り返した。その度に、記憶が飛ぶんでしょ?と理由を刷り込むように話した。

ドアを開けると受付があった。普通の内科のクリニックと何も変わりがない。初診の問診票を記入し受付を済ませた。

しばらくして、「〇〇さん。〇〇△△さん」とフルネームで息子の名前が呼ばれた。一瞬、周りに知り合いがいないかと、さほど広くない待合室を見渡した。精神科でも、名前呼ぶんだ…。当たり前の事なのに、隠れるようにしている自分は、まだ全く受け入れていなかったのだと思うし、精神科に対する偏見があったのだと思う。

診察室のドアをノックし中に入る。中には30代?40代?かと思われる女医さんがおり、パソコンの画面を見ながら、チラッと息子を見た。

「どうされました?」Y医師は、単調な声で聞いた。息子は、答えるのに困っていた。チラッとY医師が私を見たので、私は、おかしな言動が始まってからのことを、出来るだけ順をおって話した。冷静に落ち着いて話そうと思っていたけれど、心の中の不安まで、溢れ出して、早口になっていたかもしれない。途中から、涙も出てきた。

Y医師は、妄想のような話について息子に聞いた。息子は、いつも私に話すような多弁ではなかったけれど、手短に妄想の話をした。Y医師は、「それが本当の事かどうかは、私には分からないけど、寝てないんじゃないの?そんな毎日ケンカとかしてたらさぁ、身体も疲れちゃうし、ちょっとゆっくり寝た方がいいね」と言って、私に入院させるつもりがあるかを訪ねた。私は「おねがいします。」と。

Y医師は、すぐに、そのクリニックの院長先生の所へ行き、系列の病院に入院する手続きをし、紹介状を書いてくださった。

明日、H病院へ行ってください。治療は、そちらの先生に診てもらってからになります。

え?今からじゃないの?

一刻も早く治療を初めて欲しかった。でも、ここにたどり着くのに3週間近くかかってしまっている。あと1日なんて、どうってことないかと、自分に言い聞かせた。

帰りの車の中で、もう1度息子に、脳に何らかの異常があるから、しばらく入院することを話した。意外と息子はあっさり「おお」と納得していた。

そして私は、心の病気であるとは言わず、「脳の機能の病気」であると言い続けた。心=脳なのだ。

間違えてはいない。むしろその考え方は正しい。

発症から4年目となった今でも、心の病気だと伝えたことは無い。

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