01 陰性症状からの脱却(ゲーム)

発症して数ヶ月の頃、

何か、やりたい事ある?
と主治医に聞かれた時、大地は能面みたいなかたい表情で「別に」と答えていた。
心配しなくても、ちゃんとやりたい事が出てくるよ。
そう言われて、
毎日、一体それはいつの事なのか。。。と、まったく先が見えない暗闇の日々を繰り返していた気がする。
寝てばかりの毎日の中で、起きてもベッドに座ったまま、遊戯王カードをパラパラとずっと触り続けていた大地。触っていると落ち着くのだと。

そんな様子を見て涙が出た。

昔みたいに大会に行けば?と声をかけても、「いやいい。」と言われて。

ま、今は寝て過ごせばいいからさ。そのうちやりたい事が出てくるらしいし。

そう声をかけながらも、そんな日は本当に来るのかと、一寸先も見えない深い霧の中にいるようだった。

それからしばらくして、出かけてくる!と言うので、妄想の中の人に会いにでも行くのかとびっくりして、どこへ行くのか聞くと、友だちと遊戯王カードをやってくる!と。

それからは、毎日夜になると、遊戯王カードをやりに友だちの住む団地へ行っていた。中学の頃の友だちの松下くんは大学生だったから、夜しか時間が合わないと言い、いつも夜8時~9時に出かけていった。

ホントに松下くんなのか?

いつも松下くんちにお邪魔してるの?ご家族の迷惑になってない?

話を聞くと、団地の外階段で遊戯王カードやゲームをしているとのこと。

外階段?団地の人のじゃまにならない?

「大丈夫!誰も通らないから。」

妄想の中の人ではないらしい。

こうして、毎晩のように出かけていき、帰宅は深夜。時には午前1〜2時。

誰に迷惑をかけているわけでなし。松下くんさえOKならそれでヨシ。

こうして、なんにもやりたいことがないと言いながらも、遊戯王カードや城ドラはやりに行くという日が、これも数ヶ月続いた。

そのうち、突然朝早く起きる日があるようになった。

何!?

「カード買いに行ってくる。並ばないと買えないから。松下と一緒。」

こうして、ごくごくたまに、朝7時には起きて、限定カードを買いに行くようにもなった。

それでも、その他の時間はほとんど寝ている。

三年寝太郎!3年で済めばまだヨシ!もっとかかるかもしれない。それでもいい!

そう自分に言い聞かせながら、陰性症状の時期を過ごしていた。